ホーチミンで出会った担々麺風のフォー ! 

10年前、初めてホーチミンへ訪れる前、知人の方からとある作家の小説を教えていただきました。
開高健の「輝ける闇」。

1964年、34歳の開高健氏は新聞社の臨時記者として戦火真っただ中の南ベトナムへ渡り米兵に従軍。
そのときに見た戦場での苛烈な戦いや人間のリアリズムを描いた長編小説です。

緊張感に満ち、肉迫した言葉の数々は私に強烈な印象を与え、読み終えるや開高健氏という人間に引き込まれました。
10年前に日本で読んだ「輝ける闇」は、飼い猫に噛まれるなどしてボロボロになっていますが、バンコクに住む私の手元に残っています。

この記事を書くため、久しぶりに開いて読んでみたところ、細やかなところは覚えていませんでしたが、読み進めるうちに蘇ってきて、それは10年前と変わらぬ心象風景を想起させるシーンだったり、10年経って私の受け止め方や感じ方に変化が起こっている箇所があるなど、時の流れが自身にも変化をもたらせていう、至極当たり前のことを感じさせてくれました。

初めての『マジェスティックホテル』

初めて開高健氏に出会ってからから10年。
次第に開高健氏への興味も薄れ、10年ぶりにホーチミンへ行くことになっても思い出すこともなく、タンソンニャット空港へ降り立ちました。
10年ぶりに訪れたホーチミンの街は、路上を埋め尽くすバイクは相変わらずの川だけれども、それでもクラクションの数は減ったように感じ、雑然とした街並みには緑が増え、これまた当たり前ですがホーチミンにも変化が起こっていた。
そんなホーチミンの街を同行者の方と歩いていたときのことです。

「開高健が宿泊していた『マジェスティックホテル』へ行ってみますか?」

この言葉を聞いて、心のずっと奥底に横たわっていた「開高健」がむくむくと登場。
そういえば彼は、『マジェスティックホテル』で逗留中、好んでドライマティーニを飲んでいたような。
そのことを思い出し、目的もなくホーチミンの1区を歩いていた私たちは『マジェスティックホテル』へと向かいました。

マジェスティックホテル外観

入口はそれなりの風格だけれども、距離を置いて全貌を眺めるとこれといった特徴のないホテル

マジェスティックホテル5階の『Breeze Sky Bar』へと

外観はありきたりな、どこにでもあるホテルのようで、派手さも高級感も感じられませんでしたが、扉を開け館内へ進むと、外観とは打って変わり、天井からは数灯のシャンデリアが下がり、革製のソファーが幾つも並べられ、「高級」という言葉だけでは足りない「味」のあるロビーが広がっている。

マジェスティックホテルロビー

一歩館内へ進むと、刻んできた時を感じる風格

そこからエレベーターで5階へと上がると、開高健氏や記者たちが情報交換の場として使っていたという『Breeze Sky Bar』があります。

Breeze Sky Bar1

Breeze Sky Barの店内

Breeze Sky Bar2

屋外席からは眼下にサイゴン川が眺められる

Breeze sky barメニュー

ドライマティーニではなく、メニューに載っていたTHE CLASSIC MARTINIを注文してしまった

Breeze Sky Barマティーニ

夜ならばさらに雰囲気がよくなるでしょう

サイゴン川が眺められる席をとると、注文したのはマティーイ。
オーダーしてから気付いたのですが、開高健氏は確か“ドライマティーニ”だった…。
種類は同じ。ただ、GINが多いか少ないかだけの違いなので、まぁいいっか。

サイゴン川の渡った東側はいまだ木が生い茂り、まだまだ開発が進んでいませんが、西側はビルの建設がどんどん進んでいるようで、ベトナムの経済成長っぷりが伺える風景を、マティーニを舐めながらしばし眺めていました。

サイゴン川

マジェスティックホテルから北を眺めると、高層ビル群が建築中でした

眼下のサイゴン川といえば、そんなことはおかまいなしといったご様子で悠々と流れ、開高健氏が見下ろしていたサイゴン川とさほど変わらないものではないでしょうか。

Breeze Sky Bar
TEL:+84 8 3829 5514
OPEN:10:30-2:00
PRICE:マティーニ165,000VND

胡麻を使ったスープが旨い『Quốc Ký

身体のあちこちから流れ出していた汗は『Breeze Sky Bar』でおさまり、マティーニで胃袋を温めたところで、次なる目的地へと目指しました。

『マジェスティックホテル』から徒歩15分ほどにあるフォー屋『Quốc Ký(コッキー) 』です。
『マジェスティックホテル』からの足取りはこんな感じです。

私はバンコクに住んでいて、「激旨!タイ食堂」なるタイ飯ブログも運営していますが、クイッティアオ(タイラーメン)はさほど食べないんです。
どちらかと言うとバミー麺(中華麺)のほうを好むものだから、どうしても米麺のクイッティアオへ手が伸びる回数が減ってしまう。
「激旨!タイ食堂」でクイッティアオの記事を楽しみにしている方、ごめんなさいね。
嫌いではないんで、定期的に食べるようにします!

そんな私ですが、ハノイもしかりホーチミンでの滞在中はフォーを食べまくり!
タイのクイッティアオとは違い、あっさりとしたスープと、麺の種類の豊富さ、そしてなにより私の大好物であるコリアンダーなどのハーブをてんこ盛りにトッピングできることに惹かれるんです。
ハーブ嫌いな男性も多いので、男性はフォーよりクイッティアオを好む方が多いのではないじゃないでしょうか。

来店した『Quốc Ký』は、いわゆる一般的なフォー、透明感あるスープではなく、少々変わったスープのフォーがあると聞きやってきました。
メニューに載っているフォーは4種。

Quốc Ký外観

笑顔の赤い牛が目印

Quốc Kýの麺

フォー以外に中華麺(?)もあるよう

Quốc Ký店内

創業50年とはいえ移転したばかりなので内装は新しい

Quốc Kýメニュー

外国人でもオーダーしやすいよう英語も併記されています

上段の2種は一般的なフォーで、具材がレアの牛肉(Bo Tai)か、牛のミンチボール(Bo Vien)かを選べます。
私が気になっていたのは下段の2種です。
カレーのような色合いのスープで、具材は上段と同じく2つが用意されています。
ちなみに、メニューでは下段の2品のスープが異なっているように見えますが、これは写真の色合いがえらく違ってしまっているだけで、同じスープです。

練り胡麻を使ったスープはまさに担々麺!

下段2つのフォーが、私が『Quốc Ký』で食べたかったフォーなんです!
味噌のようなスープは、練り胡麻などを使った担々麺のようなスープで、胡麻の風味が薫り、通常のフォーとは違い濃厚。
トッピングにキュウリが入るなど、具材も担々麺のよう。
これが旨い!
濃厚だけれどもまったくしつこくなく、あっさり好きの私でもどんどん食べられる。

PHO SATE1

頂上に乗っかっているのが牛のすり身団子。

PHO SATE2

麺に濃厚な胡麻スープが絡む。旨い!

店主の女性が少々英語をお話しできるので、メニューの解説をしていただきました。

「Bo Vienっていうのは牛肉のミートボールのこと。Taiはレア(半生)の牛肉ね。Sateはこのスープのことよ」

Quốc Ký店主

向かって右が店主。英語を話すことが出来るので気軽に話しかければ喜ぶはず

今の場所に移転してまだ9ヶ月

タイ料理に「ムー・サテ」という、豚の串焼きにピーナッツソースをつけて食べるインドネシアから伝わった料理がありますが、この「サテ」はピーナッツソースを意味するタイ語。
ひょっとしたら同じ源流の言葉なのだろうか。

「創業してからは50年。9ヶ月前まで別の場所で営業していたんだけど、その辺にビルがたくさん建つようになってきて、ここへ移転したんだよ」

この言葉を聞いて『マジェスティックホテル』から遠目に見た、ビルを建築している風景を思い出しました。
経済発展が著しくホーチミンは、これからも街並みは変化していくでしょう。
50年も営業してきた場所を捨て、移転して営業している姿はたくましい!
旨い店はどこへ移っても支持されていくに違いありません。

【SHOP DATA】
「Quốc Ký」
TEL:(+84)903-743-109
OPEN:7:00-22:00(無休)
ADDRESS:24 Ký Con, Nguyễn Thái Bình, Quận 1, Hồ Chí Minh
PRICE:フォー55,000VND、フォーサテ65,000VND

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ABOUTこの記事をかいた人

1974年生まれ、大阪府出身。2011年にタイ・バンコクへ移住。2015年より「激旨!タイ食堂」、2016年より本サイト「激旨!アジア食堂」の運営開始。2017年、タイ国内や東南アジアの旅を扱う旅行会社TRIPULL(THAILAND)Co.,Ltd.を立ち上げる。Twitter:@nishioyasuharu