これまで何度もベトナムを訪れておりますが、その度に新しい麺料理を出会うことができ、さすがベトナム料理!と感嘆しながら舌鼓を打っている次第です。
ベトナムへ幾度も渡来している私ではありますが、実はベトナム中部へ行ったことがありませんでした。ところが世は、ダナンだホイアンだと数年前からざわつきはじめ、ちょっとしたベトナム中部ブームが到来しているようです。
ベトナムの中部に行けば、また新たな麺料理に出会うことができるはず。私の舌と胃袋はベトナム中部に思いを馳せるようになり、ついに人生初のベトナム中部へ出発することに決めました。
ベトナム中部の町 ホイアンへ
バンコクからダナン空港へ降り立った私は、Grabタクシーを利用し一路ホイアンへ。
ホイアンとは古き町並みを残す小さな町で、1999年にユネスコの世界遺産に登録され、一躍有名になったようです。たしかに町並みは風情があり、それらを眺めつつ歩いているだけでも楽しいのですが、ベトナム中部が人気を博しているためか旅行者が多い! 特に夜になると店にぶら下げられた提灯が美しく、街を歩く人はさらに増加。町並みは良くとも人が多すぎると風情が薄れてしまうなぁ!
ホイアン市場で初カオラウ(Cao lầu)
私が逗留したゲストハウスには朝食が付いておりましたが、それを辞退してまでホイアンでいただきたかった名物麺料理カオラウ。
米粉を使った太麺に、チャーシューや揚げワンタン、香菜などをトッピング。スープはなく、甘めのタレを混ぜていただく和え麺です。
ガイドブックにも載っている有名店もあるようですが、私が向かったのは朝のホイアン市場。市場へ近づくにつれ、野菜や魚介類を買い求めに来たベトナム人が道路にあふれんばかりに歩いていて、活況を呈している。昨夜、夜のホイアンを歩き旅行者ばかりの人混みで疲れましたが、市場で多勢無勢のベトナム人に圧倒されていると疲れるどころか楽しい。
写真を撮りながら人をかき分け、私がたどり着いたのは市場内にあるフードコートのような一角です。
フードコート内には幾つかの飲食店が営業しており、その中で私が見つけたカオラウ屋台は2軒。最も多い利用者はもちろん地元の人でしょうが、店に掛けられた垂れ幕には英語表記の説明もあるので、旅行者も少なくないのでしょう。
その中の1軒に着座。ホイアンで初カオラウです。
ベトナムの麺料理ではもっとも太い部類に入る太麺は、米麺にしては珍しくしっかりとした腰を持っている。一見、うどんに近い造形だけれど、表面はつるんとしておらずザラついているのも特徴です。
太麺独特の食感、揚げワンタンのカリカリ感、香草の香り、甘めのタレ。これまで出会ったベトナム麺料理には無かったスタイルで、私の中の「ベトナム麺料理ランキング」ではTOP3に入れたいほどお気に入りになりました。
カオラウを食すときは、底にたまったタレを攪拌させるため、がっつりと混ぜるのがポイントです。
カオラウは伊勢うどんがルーツなのかを考察してみた
ガイドブックでカオラウを取り上げている場合や、ネットでカオラウを調べると頻繁に見かけるのが、「カオラウは伊勢うどんがルーツである」といった表記。この説は、江戸時代の朱印船貿易によってホイアンに日本人が住むようになり、その頃に「伊勢うどん」を持ち込んだ日本人がホイアンに住むベトナム人に教えたという由来です。
伊勢うどんは直径1cmもある極太のうどんであり、醤油をぶっかけて食す方法からカオラウに似てるといえば似ています。しかしうどんで使われているのは小麦麺、カオラウは米麺と原材料がまったく異なっている。日本人がホイアンの人に伝えたなら、カオラウは小麦麺でなければ辻褄が合いません。
名前を見比べても、「カオラウ」と「伊勢うどん」とでは共通点が見出せない。
ベトナムを始め東南アジア一帯で普及している麺料理のルーツは、中国の華南と言われています。カオラウの原型となる麺料理もこのルーツを辿ってホイアンへ伝わり、いまのカオラウになったんじゃないだろうか。
タイには「ガオラオ」と呼ばれる麺無しのクイッティアオ(タイラーメン)がありますが、料理名の語感が近いのは同じルーツなのかもしれない。
由来について考えながらカオラウを平らげると、ふたたび活況のホイアン市場を散策し始めました。
【SHOP DATA】
「Hai Chien」
TEL:0164 540 0937
OPEN:6:00〜
PRICE:カオラウ 20,000ドン
麺無しじゃなくて汁無しね